現在、多くの企業でAIの活用が加速し、業務効率化や新規ビジネス創出に向けた取り組みが進んでいます。しかし、その一方で、実用化に向けて見落とされがちな要素があります。それが、「AIを動かすための土台=AIインフラ」の存在です。そこで日立ヴァンタラは、AIソリューションのポートフォリオHitachi iQを提供し、お客さまのAI活用を土台から支援しています。
2025年7月17日、ヒルトン大阪で開催された「Hitachi Social Innovation Forum 2025 JAPAN, OSAKA」では、「ヒトとAIの協働によるフロントラインワーカーの革新」の展示において、Hitachi iQを紹介し、多くの来場者から高い関心をいただきました。
HSIFレポートは別記事をご覧ください。
Hitachi iQとは?──日立ヴァンタラのノウハウが詰まったAIソリューションポートフォリオ
Hitachi iQは、日立ヴァンタラが長年培ってきた専門知識に基づき、AIの導入から運用までサポートするソリューションです。AIインフラにおけるサイジングや構築・運用の課題に対し、システム全体を総合的に支援します。また、企業のニーズに応じて、高性能かつコスト効率の高い形でのAI活用を実現します。
経験から生まれた知見をお客さまへ
Hitachi iQの開発を主導したのは、日立ヴァンタラの鬼塚久幸。日立のAIアンバサダーとして社内外の支援に奔走する鬼塚は、日立グループ内の生成AI共通基盤立ち上げを経験した一人です。
鬼塚が語るHitachi iQの最大の特長は、現場のリアルな声を反映している点だといいます。「日立グループ自身がHitachi iQの最初のユーザーとして生成AI共通基盤を実際に使い、そこで得たフィードバックをHitachi iQに取り入れることで、絶えず進化のサイクルを回しています」。
実際、日立グループ内では、コード生成やテスト工程の工数削減など、多くの成果が生成AI共通基盤によって生み出されています。
鬼塚は生成AI共通基盤の構築を振り返り、こう語ります。「生成AI共通基盤の開発にあたり、社外には出せない機密情報を安全に扱えるAIインフラ環境が求められていました。しかし、システム設計の難易度は高く、様々な要件を実運用可能な形に落とし込む作業は複雑を極め、当時はGPUの需要が急増していたこともあり、機材の調達から難航しました」。
システム構築の過程では、GPUを含む各サーバーの拡張性を織り込んだラッキングやネットワーク構成、冗長性や電力負荷を計算した構成検討など、試行錯誤を重ねたといいます。「こうした困難を乗り越えたからこそ、企業の機密情報を安心して任せられるAIインフラを構築できる技術力が身につきました。自分たちで悩み、現場から直接フィードバックを受けてきた経験があるからこそ、お客さまの課題にも寄り添うことができるのです」と、鬼塚は自信を持って語ります。
さらに鬼塚は、「AIを活用したい企業はたくさんありますが、『どう始めたらいいかわからない』という声は非常に多いです。ハードウェアの構築から運用まで、日立グループ内で一から培ってきた経験を踏まえて伴走できることは大きな強みです」と語ります。
企業が抱える3つの課題と、Hitachi iQのアプローチ
鬼塚はこれまでの経験を通じて、企業がAIインフラを導入時に直面する課題を3つ挙げます。
① モデルサイズや用途に応じたハードウェアの選定
用途に応じて必要な性能が大きく異なるAI環境において、「GPUをどのくらい導入し、どんな構成で構築すればよいか」、「将来的に拡張したい場合どうすればよいか」といったポイントは重要です。鬼塚は「各GPUの性能を最大限に引き出すためには、ハードウェアの選定、ネットワークやストレージのシステム設計・運用などにおいて、性能とコストのバランスを考慮する必要があります。日立グループ内で生成AI共通基盤を構築した際も、性能や運用、セキュリティ面で多くの課題に直面しました。しかし、これまで培ってきたストレージやスーパーコンピューターの開発、システム設計の経験が役立ち、目的に応じて最適なバランスを実現する設計のコツをつかむことができるようになりました」と振り返ります。
② AIワークロードの実行基盤の設計
AIの活用では、学習・推論といったフェーズごとに異なるリソースや設計が必要です。GPUの過剰投資を避けつつ、最適な性能を確保するには設計の知見が不可欠です。鬼塚は、「CPUとGPUを適切に使い分けながら、消費電力や設置スペースにも気を配る必要があります。特に、AIサーバーは消費電力が大きく、かつ高密度な実装が求められるため、冷却設備の検討が鍵を握ります」と語ります。より高い冷却効率を追求する中で、日立グループ内の生成AI共通基盤では、液冷サーバーの導入に踏み切りました。「液冷サーバーの導入にあたっては、液漏れや結露といったリスク管理が不可欠であり、専門的な知識と技術が求められました。こうした設備設計のプロセスを通じて、多くの知見を蓄積することができました」。さらに、ネットワークについても「ネットワーク配線の整理一つとっても、初めてやる人は何をどう繋げたらいいかわからないものです。日立グループ内の生成AI共通基盤で培われた実践的なノウハウを活用し、あらかじめ課題をクリアした状態でお客さまの現場に最適なソリューションを提供できるのが強みです」と紹介します。
③ AIを導入する際の、データのプライバシーやセキュリティ
企業の競争力強化には独自の業務知識を活用したAIが必要ですが、業務機密や個人情報を含むケースが多く、クラウド上での運用に懸念を持つ企業も少なくありません。「日立グループ内でも、『社内にはクラウドに載せにくい重要なデータもあり、その扱いに困っている』という声が非常に多かったです。その点、オンプレミスでのAI基盤構築は、データの完全な制御を維持できる点で大きなメリットがあります」。さらに、「オンプレミス環境で運用を行い、データを安全に保護したままAIを活用できるHitachi iQのような存在は、高度な機密性が求められる業界や法令遵守が厳しい地域で特に求められています。日立が長年培ってきた高い信頼性の製品づくりは、Hitachi iQにおいても遺憾なく発揮されているのです」と自信をのぞかせます。
企業の技術力向上を支援し、サステナブルな成長を支援したい
また、鬼塚がもう一つ重視しているのは、「技術を自社に残す」という視点です。
「クラウドは便利ですが、それに頼りすぎてしまうと、インフラやAI活用のノウハウが社内に残りにくいという課題もあります。一方、オンプレは一見ハードルが高いですが、企業内に技術力が蓄積され、結果として自分たちのやりたいことの実現に繋がります。もちろん、オンプレでの構築は難しい部分もあるので、日立がサポートして伴走いたします。オンプレで構築する中で、実際に手を動かせるエンジニアを育成し、お客さま自身で付加価値を創出できるようにする、そんなサステナブルな取り組みの伴走者でありたいと考えています」。
AIに関する技術や適用範囲は、日々進化し続けています。それらを最適な環境で活用し、ビジネスに効果的につなげるためには、適切な実行基盤としてのAIインフラが不可欠です。Hitachi iQは、ビジネスの土台として今後も新たな価値を提供し続けてまいります。
さらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。日立グループの生成AI共通基盤を間近で見学いただける見学会も実施しています。