“止めない・失わない” ビジネスを支える品質の舞台裏に迫る〈全4回〉
AIの急速な普及やDXの進展により、企業におけるデータの価値はこれまでになく高まっています。データ活用が企業の競争力を高める一方、データインフラが停止した際のリスクは計り知れません。日立ヴァンタラは、さまざまな業種のミッションクリティカルシステムを支えるデータインフラを提供しています。日立ヴァンタラのストレージ製品は、国内外で「Unbreakable=壊れない」と称されており、Fortune Global 100企業の86%に採用されるなど、グローバルで高い評価を得ています。ミッションクリティカルな現場から求められる高い品質は、設計・製造から保守・サポートに至るまで、全社に根付く統合的な品質マネジメントによって実現しています。本連載では、日立ヴァンタラの品質保証部門のキーパーソンへのインタビューを通じて、品質を競争優位として磨き上げてきた背景と、決して妥協を許さないその実装のメカニズムを紐解きます。
連載2回目は、品質を検査ではなく設計段階から実装するという思想のもと、製品開発の現場で実践されている品質づくりの仕組みに迫ります。
上流工程からプロセスそのものに品質を実装する
岡木の語る強烈な使命と品質マインドは、実際の製品開発においてどのように具現化されているのでしょう。品質保証本部 開発品質保証部 部長 森永 広介は、その設計思想の根幹を次のように解説します。
「私たちは、データの喪失やデータ不正のトリガーを徹底的に排除することに強くコミットした設計思想を持っています。ストレージシステムを構成するハードウェアは、コントローラーから電源、ファンに至るまで徹底した多重化・冗長化を図っています。ただ、単に部品を二重化して並べるだけでは不十分。万一の故障時にも、システムを止めずに動き続けられるようにするためには、ハードウェアとそれを補完するソフトウェアがうまく連携して動作する設計が欠かせません」
一部の部品が壊れかけたり、システムが想定外の状態に陥ったりした際に、ハードウェア単体では防ぎきれない事態が発生するかもしれません。そこをカバーするのが、ソフトウェアによる「ガード救済」の仕組みです。プログラムが異常を自律的に検知し、故障箇所を瞬時に切り離すことで、システム全体への波及を防ぎ、稼働を継続させます。ハードウェアとソフトウェアが両輪となって極限の可用性を担保する設計こそ、“Unbreakable”を実現する最大のカギなのです。
優れた設計思想は、正しく実装されることで初めて価値を生みます。日立ヴァンタラの品質保証部門は、出来上がった製品を最後に「検査でチェック」をするのではなく、開発の最上流から入り込み、プロセスそのものの中に品質を「実装する」ことに重きを置いています。
「作る前、作る途中、作った後。これらの各段階で品質保証部門による厳格なレビューが組み込まれています。たとえば、FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)やFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)といった手法を用い、考え得るあらゆる故障パターンとその影響を事前に分析します。さらに、長年蓄積してきたデータ保護設計指針など、日立ならではのノウハウを掛け合わせて検証を行います」(森永)
品質保証本部 開発品質保証部
部長 森永 広介
世の中には数多くの品質管理の手法が存在します。FTAやFMEAも、一般的な手法であり、特殊なやり方ではありません。それでも森永は「当たり前のことを愚直に、きちんと、徹底してやり続けることが最も重要なのです。さまざまな現場を見る機会があるのですが、一見するとできているように見えるのですが、実はきちんとできていないという現場は意外と多いものです」と指摘します。日立ヴァンタラには、長年の実践知を体系化し、継続的に進化させてきた独自の品質マネジメントがあります。テクノロジーも取り入れながら進化を続け、業務プロセスの中で一貫して実行される仕組みとして機能しています。
巨大化するソフトウェア品質の管理にAI活用も
ハードウェアの進化に伴い、ストレージを制御するソフトウェアも高度化・複雑化の一途を辿っています。日立ヴァンタラの全機種に搭載されているストレージOSである「SVOS(Storage Virtualization Operating System)」は、いまや汎用OSの中でも、OSの動作を支える基盤部分に匹敵するソースコード規模です。
森永は、「これだけ巨大なプログラムになると、機能追加や修正にあたって一部のコードを修正すると、開発者が想定していない思わぬ箇所に影響を及ぼすリスクが出てきます。想定外の挙動を起こさせないための仕組みづくりが、現在の品質保証において極めて重要になっています」と話します。その対策として、開発情報はGit(分散型バージョン管理システム)で一元管理。エンジニアのコーディング活動や修正履歴、さらにはセキュリティアップデートの適用状況などの重要な情報を、開発部門と品質保証部門が常に共有・可視化できる状態を維持し、透明性の高い品質管理を実現しています。
さらに、この複雑なソフトウェア品質を支えるために、AIの活用も推進。ソースコードという企業の最重要機密を扱うためにセキュリティを最優先し、社内の閉じた環境で運用する「Local LLM(大規模言語モデル)」を独自に稼働させています。「社内に蓄積されている過去の膨大な修正履歴を含めたデータをこのAIに学習させています。現在実験中の段階ですが、エンジニアがプログラムを修正する際に、AIがモジュール同士の複雑な関連性を解析し、“このコードを触ると、この部分に影響が出る可能性がある”と教えてくれたり、意図しないエラーが出た際に“原因はここではないか”と提案してくれたり。これらをAIが示唆してくれることで、開発者に気づきが生まれますから、開発効率は高まるはずです」(森永)
AIが影響範囲の特定や原因究明をサポートすることで、人間が見落としがちなリスクを網羅的に洗い出すことができます。その一方、森永は「AIに完全に依存することはなさそうです」とも話します。「最終的な確認と判断は必ず人間が行う必要があります。AIは優秀ですが、現状ではあくまで高度な支援ツールというレベル。優れた開発者とAIが協調することで、バグの混入をゼロに近づけていきたいと考えています」(森永)
日立ヴァンタラ社の幅広い製品ラインナップ、卓越した経験、そして業界をリードする基準に感銘を受けました。同社の製品とサービスは、私たちにとって品質の保証でした。
China Southern Fund
出典:https://www.hitachivantara.com/en-us/company/customer-stories/china-southern-fund-management-case-study
次回、連載3回目は「サプライヤーと共に築く品質のエコシステム」をお届けします。 (5/28公開予定です。)