記事一覧に戻る Unbreakableを体現する日立ヴァンタラの品質DNA | 第3回

サプライヤーと共に築く品質のエコシステム

2026年5月28日

“止めない・失わない” ビジネスを支える品質の舞台裏に迫る〈全4回〉

 AIの急速な普及やDXの進展により、企業におけるデータの価値はこれまでになく高まっています。データ活用が企業の競争力を高める一方、データインフラが停止した際のリスクは計り知れません。日立ヴァンタラは、さまざまな業種のミッションクリティカルシステムを支えるデータインフラを提供しています。日立ヴァンタラのストレージ製品は、国内外で「Unbreakable=壊れない」と称されており、Fortune Global 100企業の86%に採用されるなど、グローバルで高い評価を得ています。ミッションクリティカルな現場から求められる高い品質は、設計・製造から保守・サポートに至るまで、全社に根付く統合的な品質マネジメントによって実現しています。本連載では、日立ヴァンタラの品質保証部門のキーパーソンへのインタビューを通じて、品質を競争優位として磨き上げてきた背景と、決して妥協を許さないその実装のメカニズムを紐解きます。

 連載3回目は、自社にとどまらず、サプライヤーや製造現場と連携しながら品質を高めていく取り組みを紹介します。

カタログに頼らず、過酷な条件で“実力”を見極める部品選定

 設計段階でどれほど完璧な「Unbreakable=壊れない仕様」を充たしても、製品を構成する膨大な部品群の一部にでも欠陥があれば、システム全体の信頼性は守れません。日立ヴァンタラにおけるハードウェア製造の最前線とサプライチェーンの品質管理を担う品質保証本部 開発品質保証部 担当部長 梅澤 唯史は、部品選定における絶対的なルールを次のように表現します。

 「私たちは、カタログスペックだけを鵜呑みにしないという姿勢を貫いています」。汎用的な電子部品であっても、部品メーカーが提示する保証値や寿命を額面どおり受け取ることはありません。なぜなら、ストレージは常にデータの書き込み/読み出しが実行される過酷な稼働環境下に置かれており、想定外の負荷がかかるケースがあるためです。「現実に起こりうる厳しい使用環境より過酷な状況を想定し、部品の定格に対する“ディレーティング(余裕を持たせたマージン)”を独自に厳格に設定しています。ギリギリの限界値における実力を自らの手で再評価し、マージンを確保できた部品だけを採用しているのです」(梅澤)

 さらに、製造工程の最終関門としてスクリーニングを徹底します。工業製品の故障率の推移を示す「バスタブ曲線(故障率曲線)」によれば、新製品の市場投入直後に発生する「初期不良」は存在します。日立ヴァンタラでは、この不良を納品後のユーザー環境ではなく、出荷前の工場内で出し切るために過酷な稼働実験を実施します。

 梅澤は、「装置を高温/低温環境などの厳しい条件下で連続稼働させ、潜在的に弱い個体をあぶり出します。ただ不良品を排除するだけでなく、なぜ弱い個体が発生したのかという原因を究明し、サプライヤーとも協力して根本的な製造プロセスの改善に繋げています」と話します。


品質保証本部 開発品質保証部

担当部長 梅澤 唯史

AIとARの融合による、人為的ミスの極小化

 物理的な部品の品質を極限まで高めると同時に、製造工程における「人為的ミス(ヒューマンエラー)」を防止するための最先端のアプローチも始まりました。ミッションクリティカル用途で使用されるストレージ製品は、搭載するドライブの種類や構成がユーザーごとに異なるなど、完全に同一仕様の完成品を大量に生産し、納品するケースはまれです。日立ヴァンタラでは、生産ラインにおいて正しい構成部品が組み込まれていることを自動で照合・判断するための取り組みをスタートさせました。その一環として、AR(拡張現実/複合現実)とAIを組み合わせた構成支援システムを米国の工場において試験導入しています。

 「人間は、どれだけ気をつけていてもミスをする生き物です。そこで、作業者が実際の機器を組み立てる際に、スマートグラスを使ってARでガイドを重ねて表示し、手順をナビゲートします。もし誤った部品を組み込もうとしたり、構成を間違えたりした場合には、AIがその場で瞬時に検知し、ARの視界上に警報や注意喚起を表示して作業を止めます」(梅澤)

 この取り組みでは、ネジの締め付けやケーブルの挿し込みなど、担当者によってバラつきが出やすい作業においても、AIが常にモニターし、誰が担当しても同じ品質を実現できる仕組みを目指しています。これにより、複雑な構成における作業ミスを大幅に削減し、教育効率と作業品質の向上につなげたい考えです。

 

現場に入り、サプライヤーと共に品質を高める

 日立ヴァンタラの品質管理対象は、自社工場の中だけにとどまりません。部品を調達するサプライヤーや、そのサプライヤーに部品を納品するTier2、Tier3のサプライヤー、さらには素材メーカーとやり取りするケースも出てきます。各社とは、日ごろから製品不良の解析と改善において密接に連携。品質ミーティングを定例化することで、歩留まり改善策や製造プロセスの変更点といった情報を双方向で共有する体制を整えています。実際に、そうした取引先の工場へ品質保証部門のエンジニアが直接足を運ぶことも珍しくありません。さらに、新規部品の採用段階では共同評価を行うなど、設計段階から品質を作り込むアプローチも徹底しています。これらの取り組みにより、単に部品を調達する側/供給する側という関係を超え、ミッションクリティカルな製品品質を共に支えるパートナーシップの基盤を築いています。

私たちキオクシアは、日立ヴァンタラのデータインフラに不可欠なSSDを提供し続けています。停止や誤動作、データロスが許されないことからSSD に対する品質要求水準も極めて高く、日立ヴァンタラの品質問題の芽を早期に摘み、後工程に不良を逃さないという強い姿勢は感服するものがあります。日立ヴァンタラの経験と実績に裏打ちされた深い洞察や探求心は目を見張るものがあり、私たちにとって今もなお多くの学びの場を提供してくれます。品質第一主義と真面目なものづくりへの取り組みは同じ日本企業として共通する価値観であり、今後とも日立ヴァンタラと共に社会基盤を支えていけることを誇りに思っております。

キオクシア株式会社 SSD事業部 SSD信頼性技術・品質保証部長 松尾 裕一郎氏


 梅澤は、「私たちは現場・現物主義を貫いています。実際に、書面のチェックリストで、基準を充たしている、と報告されても、現場の空気や作業者の動きを見ないとわからないリスクや“勘所”があるのです。そして、不備を見つけたら一方的に改善を要求する下請け管理ではなく、私たちのエンジニアが現場に入り込んで技術支援を行い、一緒に品質を育てるパートナーとしての関係を築いています」と話します。

 ただ、それは日立ヴァンタラが培ったものづくりのノウハウを惜しみなく提供することにもつながります。梅澤は、「結果的に他社向けに出している部品の品質も上がってしまうかもしれませんが、業界全体が良くなるのは良いことなのですよ」と笑顔を見せます。「相手は直接の取引先ではありませんし、正直なところ、最初は煙たがられることもあります。それでも、最後になると品質が上がって感謝していただけます。非常にやりがいのある仕事です」。

 私たちがサプライヤーに求める要件は高度で専門性が高く、それに応えられる企業は決して多くありません。だからこそ、パートナー企業とともに品質を高めあい、お互いに成長していく「品質のエコシステム」を構築する必要があるのです。品質向上には当然コストと手間がどちらもかかりますが、梅澤は「迷ったら品質を取る」と断言します。「品質にかけるコストは、出荷後に万一のことが起きて発生する莫大な対応コストや、何よりお客さまからの信用失墜という取り返しのつかない損失を防ぐための投資です」。

 現場を視察する際に注目するのは、“作業者がやりづらさを感じているところ”です。不良の多くは、現場のやりづらさや無理な作業に起因しているケースが多い傾向にあるといい、そのあたりを見極めるスキルもまた、日立ヴァンタラの社内に根付いています。

 

データを守り抜くための究極のテスト

 サプライヤーの現場、設計・開発、生産現場というすべての場面で品質を確保し、最後に行われるのは、極限状態を想定した検証プロセスです。日立ヴァンタラが最も重視しているのは、平時の安定稼働はもちろんのこと、非常時に非常装置が確実に働くかどうか。そのために、稼働中の装置のケーブルやモジュールを順番に引き抜いていき、システムが止まらずに動作を継続することを確認するホットスワップ(活線挿抜)の試験を容赦なく行います。

 さらに過激なのが、稼働中のコンセントをいきなり引き抜くという「抜栓試験(電源断テスト)」です。

 落雷やビル全体の計画停電など、予期せぬ電源喪失が起きた際、ストレージ内のキャッシュメモリにあるデータは通常であれば消えてしまいます。しかし日立ヴァンタラの製品はすべて、電源が落ちたことを検知した瞬間に内蔵バッテリーが立ち上がり、キャッシュ内のデータを安全な不揮発性メモリへと退避させる仕様です。この非常用機能が確実に作動するかどうかを、実際に電源を引き抜いてテストするのです。

 品質保証本部 開発品質保証部 担当部長 梅澤 唯史は、「お客さまには絶対にやってほしくないことを工場で実行していることになりますね」と話す。「もちろん、このテストによって部品が劣化するようなことはありません。一方で自動車のエアバッグのテストと同様に、「いざという時」に確実にデータを守り抜けることを事前に証明するという点に注力しています。その確認ができて初めて、お客さまの元へ出荷できるのです。


日立ヴァンタラ製品が高く信頼されている理由は、製造に携わるようになってわかりました。試験の数が圧倒的に多いのです。

UMC・H エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 水越 浩幸氏

 次回、連載4回目は「日本発の品質で世界中の社会インフラを支える」をお届けします。 (6/4公開予定です。)

 

これまでの連載はこちら

連載第1回:データとビジネスを守る揺ぎなき信念

連載第2回:上流から品質を実装する製品開発の最前線

 

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